お墓の歴史墓地の種類と特徴墓地選びのポイントお墓のしくみ墓石を選ぶポイント
埋葬の基礎知識改葬の基礎知識
 
 
 お墓を建てる際、最初に考えるのがお墓の形態です。お墓の種類には合祀墓、個人墓、比翼塚、会社墓などがあります。それぞれの特徴を紹介しましょう。
 
1基のお墓を建て、墓碑の表面に「○○家之墓」などと刻み、代々の遺骨を納めて祀ることから代々墓とも呼ばれています。納骨するたびに墓碑の裏側などに、戒名や法名を列記する形で、現在のお墓の多くがこの形態です。
 
個人名を墓碑に刻んだ個人専用のお墓です。墓地不足の現状では少なくなっています。
 
夫婦2人のお墓で、夫婦のどちらかが亡くなった時に建てるものです。墓碑の表面には右側には夫、左側には妻の戒名を刻みますが、生存している人の戒名も朱書きで刻みます。与謝野鉄幹・晶子夫妻のお墓が有名です。
 
会社や団体に貢献した多数の人々を祀るお墓です。各家庭から分骨した遺骨を納める納骨室のあるお墓と、遺骨は納めない慰霊碑的なお墓があります。
 
 お墓の形には決まりはありませんが、古くから伝わる五輪塔や多宝塔、一般的な和型(角柱塔型)、洋型(オルガン型)、和洋折衷型、キリスト教式、神式などに、最近では円形や三角形などのニューデザイン墓も増えています。和型の原型になる三段型は江戸時代に誕生したもので、基本構成は、墓石、納骨棺(カロート)の他に外柵や墓参りに必要な祭具などです。こうした基本のお墓を建てるのに必要な広さは、一般的に4〜5平方メートルが基本とされています。現在、墓地の区画はほとんどメートル法によりますが、墓地によっては従来の尺貫法を使用することもあります。尺貫法は三尺角(0.81平方メートル)を1聖地という単位で表し、4聖地で1坪になります。地域によっては、聖地の広さが異なることもあります。
 
 和型や洋型、ニューデザインなどのさまざまな形がありますが、墓地によっては大きさや形が指定されているところもあります。一般的な和型は台石が2段、上から竿石、上台石、中台石、芝石で構成されます。横長の洋型には安定感のあるオルガン型やストレート型があり、芝生墓地や公園墓地などに多く、最近では人気が高まっています。
  歴史のある五輪塔は「地・水・火・風・空」の五輪を方・円・三角・半円・宝珠の5つの形に表したもので、自然界そのものを意味しています。五輪塔は真言宗や天台宗のお墓に多く見られましたが、最近では他の宗派(浄土真宗以外)でも建てられています。年忌法要に用いられる卒塔婆は、五輪塔の略式型のようです。
  宝篋印塔(ほうきょういんとう)は、五輪塔の地輪に刻んだ戒名がいっぱいになるほど先祖が多い場合に建てられるようです。さらに先祖が10代、20代と続いている場合は、六角形の塁宝塔を建てることもあるようです。
 
 納骨棺は遺骨を納めるお墓のことで、地下式カロートと地上式カロートの2種類があります。地下式は墓石の地下に造られ、コンクリートの箱形のもの、みかげ石で造ったものなどがあります。地上式は地上面の基壇の中、もしくは下台石の中をくりぬいて造ったものです。
 
 外柵は隣接する墓地との境界をはっきりさせるためのもので、巻石、境石とも呼ばれています。簡単なものから立派な石垣や入り口に門柱をつけた豪華なものもあります。また、芝生墓地のように境界のないお墓もあります。
 
 墓石の祭具として花立て、香炉、水鉢があります。故人の渇きを癒すための水鉢を中心に、花立ては左右一対として直接上台石に穴をあけたものや、別になったプラスチック製のものがあります。
 香炉は線香を立てるタイプと横に寝かせるタイプがあります。付属品として、墓前や墓石の横に丸や角の墓前灯籠、雪見灯籠などを置くこともあります。また、墓所内に砂利を敷いて雑草を防いだり、芝生や木を植えて自然を感じさせる工夫をしているお墓もあります。植木は落ち葉の少ない低木の常緑樹で根の張らないものを選び、近隣に迷惑がかからないようにします。
 
 墓誌は石に納骨されている故人一人ひとりの戒名、死亡年月日、年齢、俗名などを刻むものです。ふつうは向かって右から、亡くなった人の順に刻み、石板は黒みかげ石を使うのが一般的です。
 
 
★一般的な墓石の価格

お墓を建てる費用は、墓石代一式に墓地使用料(公営墓地約100万円)を加えると、約300万円が必要となります。最近ではローンを利用できる石材店も増えているので相談してみるのも一つの方法です。

●墓石に刻むもの
基本的に墓石に刻む文字に決まりはありません。古くは経文などが刻まれていましたが、武士階級が戒名や法名を刻むようになり、明治時代になって一般的に「○○家之墓」などと本名や家名が刻まれるようになったのです。今日では洋型のお墓に、愛とかやすらぎなどという言葉や詩、文章が刻まれているのを多く見かけます。刻字の書体は楷書体や行書体、ゴシック体などと自由に選択できますが、永久に残るので全体の印象やバランスなどを考慮することが必要です。